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母がプレゼントしてくれたパワーストーン

私が母に頂いて、とても感謝している物があります。
それは柔らかい紫色の小さな袋に入った、ハート型をした石です。
母がなぜ私にこんな物をくれたのか、その理由はわかりません。
別に私の誕生日でもないし、クリスマスなどの特別な日でもありません。
でも母が、はい、あなたにプレゼントをあげる、そう言って私の手のひらに紫色の袋を載せたのでした。
なあに、これ、と私が言うと、母はにこにこ笑いながら、あなたに必要な気がしたからあげるわ、と言うのです。
ふうん、ありがとう、と私は別に嬉しいでも何でもなく、そう言って母からのプレゼントを受け取りました。
この日、私は久しぶりに実家へ帰っていたのです。
私は東京で一人暮らしをしながら、働いていました。
仕事はなかなか大変でしたが、十分に任せてもらえることも増え、充実していました。
私はもう30歳半ばでしたが、一向に結婚する気配がなく、母は心配していたかもしれません。
でも母は私に面と向かって、結婚のことを話題にすることは、一切ありませんでした。
母は10年前に父と離婚していて、自分があまり幸せな結婚じゃなかったので、娘である私には、結婚を勧めにくかったのかもしれません。
私も、幼い頃から両親の仲の悪さを見てきていたので、自分が結婚して幸せになる、というのはあまり考えられませんでした。
そういう経緯から、私は自分一人でも食べていけるように、勉強をして大学へ行きました。
最初から企業に就職するつもりだったので、それに関連する資格も取り、技術も身に付けていきました。
母は、そんなふうに生きていく娘の私をいつも見守り続けてくれました。
私が母からもらったプレゼントをゆっくり眺めたのは、3か月も過ぎた頃でした。
それは私がすっかり母から貰ったことを忘れていて、バッグの中からハンカチを取り出そうとして、気づいたのでした。
とにかくその日は、暑い日でした。
私は少々その暑さに参っていましたが、取引先の会社に説明に行かなくてはなりませんでした。
体調が悪いことは今までも何度かあり、その度に心が折れそうになりましたが、私は何とか乗り切ってきました。
しかしこの日の私はとても体が怠くて気力も落ち、ため息ばかりついていました。
そんな私の態度を上司に見られてしまい、そんなことで相手を説得させることが出来るのかと、私は怒鳴られました。
私は悔しさと怒りでいっぱいになりました。
この時、私の心に冷静さを取り戻してくれたのが、母のプレゼントでした。
たぶん私は母の顔が浮かんで、冷静さを取り戻したのだと思います。
上司にも素直に謝り、淡々とした態度で取引先に説明することが出来ました。
その日の夜、行きつけのバーで、ブランデーのニコラシカを味わいながら、私はそっと母のプレゼントを眺めてみました。
紫色の小さな袋から出てきたのは、やはり紫色の美しい石でした。
その場で私は、母に電話をしました。
母は、それはパワーストーンなのよ、あなたのお守りにして頂戴ねと言いました。
私はほろ酔いしていたのもあってか、母に、この石がね、私を助けてくれたの、ありがとう、と言いました。
母の日の私は、母にすごく感謝でいっぱいの気持ちになり、涙ぐんでしまいました。
いつも優しい言葉をかけてあげなくて、そして心配かけてごめんなさい、お母さん、私は心から思いました。

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